相続税の対策には、生前対策が重要!生前贈与や暦年贈与について
相続が開始されてから相続税の対策を始めても、十分なことはできません。節税効果も限定的です。生前から相続対策を行うことで、よりよい効果を得ることができます。相続税の生前対策として、メインとなるのが生前贈与です。ここでは、生前贈与とその種類について解説します。
毎年110万円ずつなら基礎控除で非課税になる暦年贈与
親族が財産を引き継ぐ方法には、生前に行う「贈与」と死亡後に行う「相続」があります。原則、生前贈与で受け取った財産は、相続税の対象となりません。ただし、贈与税の対象になります。
では、相続対策としてなぜ生前贈与が重要なのでしょうか。それは、贈与には基礎控除があるからです。基礎控除とは、その贈与に対して、すべての納税者が受けることのできる控除のことで、1年間に110万円あります。つまり、1年間で110万円までの贈与であれば、贈与税も相続税もかかりません。1年間で110万円超の贈与をした場合に、その超えた部分に対して贈与税を課すというのが贈与税の基本の考え方です。これを「暦年贈与」といいます。
暦年贈与の場合、基礎控除は1年間で110万円であるため、例えば、毎年110万円までの贈与をしていけば、その分節税効果が大きくなります。極端な例を挙げれば、10年間毎年100万円ずつ贈与していけば、100万円×10年間=1,000万円が非課税となります。
暦年贈与における税金の計算式は以下のようになります。
贈与税額=(その年の贈与財産の価額-基礎控除110万円)×贈与税率-控除額 |
贈与税率は10%~55%で、贈与した財産の価格が高ければ高いほど税率も高くなります。
2,500万円まで非課税となる相続時精算課税も考慮する
生前贈与において生前贈与とともに考えなければならないのが、相続時精算課税制度です。相続時精算課税制度とは、簡単にいうと、生前贈与時には贈与税をかけずに、後の相続の時に被相続人(死亡した人)が所有している財産と生前贈与した財産を含めて、全ての財産に相続税をかけるという制度です。相続時に生前贈与された財産を精算することから、相続時精算課税といいます。
暦年贈与では贈与時に贈与税を課しますが、相続時精算課税では贈与税を課しません。相続時精算課税は、一度に多くの財産を生前贈与したいが、その時に贈与税を支払いたくない場合などに有効です。
この説明だけでは、相続時精算課税制度では、相続税対策にならないのではないかと思われる人もいるでしょう。実は、そんなことはありません。相続税は、被相続人が死亡した時の価値を基準として税額を計算します。しかし、相続時精算課税制度を利用した場合、その贈与した財産については、相続時ではなく贈与した時の価値を基準として税額を計算します。そのため、時間がたてば確実に価値のあがる財産は、あらかじめ贈与しておくことで、相続税の節税となります。
例えば、再開発がかかり、相続時に値上げが確実な不動産や、事業が好調で値上がりが確実な会社の株式などを所有している場合は、値上がり前に生前贈与しておくことで、相続税の納付額を低く抑えることができます。なお、相続時精算課税制度は贈与税の特例制度であるため、人や金額に次のような一定の要件を設けています。
人の要件
相続時精算課税制度では、受贈者(財産をもらう人)が、贈与者(財産をあげる人)ごとに制度を利用するかどうかを選択します。贈与者は、贈与した年の1月1日で60歳以上の父母または祖父母しか認められません。受贈者は、贈与を受けた年の1月1日で20歳以上の子供(相続時に相続人と推定される子供)、または孫(相続時に相続人と推定される人でなくてもよい)です。ただし、孫に贈与する場合は、相続時の相続税2割加算の対象となるので注意しましょう。
金額の要件
贈与財産の合計2,500万円までは非課税。2,500万円を超える分は一律20%の税金がかかります。相続時精算課税は1年だけ適用されるわけでなく、相続が開始されるまで何度でも贈与できます。その贈与の合計額が2,500万円になるまで非課税です。贈与した財産は相続時に精算するため、支払った贈与税も相続時に計算する相続税から控除されます。
※暦年贈与の場合、基礎控除以下の贈与をした場合など納める税額がない場合は、贈与税の申告は不要ですが、相続時精算課税制度を利用した場合には、納める税金がない場合も贈与税の申告書と相続時精算課税選択届出書を税務署に提出する必要があります。
生前贈与の賢い活用法は、税理士に相談を
暦年贈与と相続時精算課税には、それぞれ様々な注意点があります。例えば、暦年贈与の極端な例として、10年間毎年100万円ずつ贈与する例を挙げました。しかし、実はこのケースでは、最初の年に1,000万円の贈与できたのに、税金逃れをするために分割で贈与したとみなされ、後で、税金がかかる場合があります。本当に毎年贈与する必要がある場合には、それを証明する証拠を残すなどの対策が必要です。
また、相続時精算課税制度は、1度選択すると、後で暦年課税に戻すことができないデメリットもあります。大事なのは、さまざまなことを十分シミュレーションし、自分に最も合う方法がどれかを見極めることです。しかし、一人で自分に最も合う方法を見極めることは容易ではありません。相続対策の経験のある税理士などの専門家と一緒に対策を考えていくことが重要になります。
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