「小規模宅地の特例」で土地の相続税評価額を減額できる

相続が起きると否応なく相続税の問題に直面することになりますが、日本の税制では相続人の負担を減らすための様々な減税施策が用意されています。

遺産に占める不動産の割合が大きい我が国の実情に沿って、価額が大きくなりがちな土地について大幅に相続税評価を下げることができる「小規模宅地の特例」がその一つです。

この章では小規模宅地の特例がどのようなものか解説していきます。

宅地の評価額を最大8割減額評価できる

この特例が相続税対策で大きな役割を果たすのは、負担の軽減度合いが非常に大きいためです。

特例を適用できる土地の種類や限度面積などは後述しますが、最大で8割も評価を下げることができます。

例えば1億円の土地であれば、これを2000万円にまで評価を下げて計算することができるということです。

ごく単純に双方に対応する相続税率を当てはめてみると、1億円換算であれば税率30%、控除額700万円ですから2300万円の相続税となります。

これが2000万円換算であれば対応する税率は15%、控除額50万円ですから、250万円となります。

評価額を大幅に減額できる分、税額も大きく下げることができるわけです。

特例を利用できる土地の種類と限度面積

この特例が適用になる土地は4つの種類があり、それぞれに対応する限度面積があります。

  1. 特定居住用宅地等・・330㎡までを限度に80%の評価減
  2. 特定事業用宅地等・・400㎡までを限度に80%の評価減
  3. 貸付事業用宅地等・・200㎡までを限度に50%の評価減
  4. 特定同族会社事業用宅地等・・400㎡までを限度に80%の評価減

上の①は被相続人等が居住用に利用していた土地、②は貸付用以外の事業に利用していた土地、③は駐車場業など貸付業用に、あるいは一定の法人に貸し付け、一定の事業に利用させていた土地、④は親族を含めて50%以上の株式を保有する会社に貸し付け、事業利用(貸付業以外)させていた土地をいいます。

概念が難しいですが、現実の相続で最も多く利用される①の特定居住用宅地は最低でも押さえておきましょう。

特例を利用するには条件を満たさなければならない

本施策は特例ということで、一定の条件を満たさなければ利用することができません。

条件は非常に細かいため、ここでは最も利用の多い前項の特定居住用宅地に絞って主要な条件を抜粋してみます。

特定居住用宅地はさらに、

  1. 被相続人自身が居住していた土地
  2. 被相続人と生計を一にする親族の住居として利用されていた土地

に分かれます。

そしてさらに「誰が」取得するのかによって条件が変わります。

①について、
a配偶者が取得する場合・・・条件無し

b同居していた親族が取得する場合・・・相続開始の時から相続税の申告期限までその家に居住し、且つその宅地を相続税の申告期限まで保有していること(売ってはダメということ)

c非同居の親族が取得する場合・・・

  • 被相続人に日本国籍があり国内に住所を有すること
  • 被相続人に配偶者がいないこと
  • 相続直前にその家に住んでいた相続人が他にいないこと
  • 当該非同居の親族が、相続開始3年以内に自分または配偶者の所有する家屋に住んだことがないこと
  • 相続税の申告期限までに保有を続けること

②について、
a配偶者が取得する場合・・・条件なし

b生計を一にしていた親族が取得する場合・・・相続開始の時から相続税の申告期限までその家に居住し、且つその宅地を相続税の申告期限まで保有していること。

一般の方にはとても難しいと思いますので、税理士等専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

計算例を見てみよう

ここでは仮に居住用宅地5000万円・地積500㎡の場合の計算例を見てみます。

居住用宅地の限度面積は330㎡までですから330㎡/500㎡までが適用を受けられます。

計算すると、5000万円×330㎡/500㎡×80%=2千640万円が減額されます。

従って5000万円-2千640万円=2千360万円の土地評価額とすることができます。

特例の利用には申告が必須

相続税は基礎控除の枠内に収まれば申告は不要ですが、本特例を利用した結果相続税の負担がなくなったとしても申告自体は必ず必要になります。

相続税の申告の際に、本特例を利用して計算した結果の明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の説明資料の添付を求められます。

小規模宅地の特例を上手に活用したいなら当事務所にお任せ!

この特例はとても減税効果のあるものなので、利用できるケースでは漏れの無いようにしたいものです。

しかし条件などが非常に細かいため一般の方にはなかなか分かり辛いのが難点です。

多くのケースで土地が相続財産に入ってきますが、その土地がどのような用途とされていたのか、誰がその土地を取得するのかなどによって適用条件はめまぐるしく変わります。

当事務所にお任せいただければ、あなたの状況を読み取って適用の要否をすぐに判断できますし、場合によっては生前から本特例を上手に使うためのアドバイスも可能です。

ぜひ一度横浜・川崎の当事務所にご相談くださいませ。