養子縁組による節税効果とは?手続きはどうすればいいの?
相続分野では節税を目的にした様々な手法が用いられますが、「養子縁組」もその一つです。
養子縁組は簡単に言えば血の繋がりに関係なく、法律的な作用を用いて誰かを自分の子どもとして扱うことができる制度です。
子どもを増やすことでどんな節税効果があるのか、この章では養子縁組のメリットやデメリット、手続きの方法などについて解説していきます。
相続税の基礎控除枠を拡大できる
相続税対策として検討する場合、養子縁組の最大の利点は基礎控除の枠を拡大できる点にあります。
基礎控除枠は「3000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。
近年縮小されてしまったとはいえ、この基礎控除は多くのケースで相続税の負担を無くしたり、大幅に軽減してくれます。
養子縁組は上記の計算式のうち「法定相続人の数」を増やしてくれる作用を持ちます。
配偶者は生存していれば必ず相続人となる他、他の法定相続人には優先順位があり、そのうち「子」扱いになる養子は順位1位ですからこちらも生存していれば必ず相続人となれるからです。
ただし、養子縁組制度を濫用して基礎控除枠を無限に増やすなどの行為をけん制する為、相続税法上は養子を「子」の人数としてカウントする際に制限をかけています。
被相続人に実子がいる場合は養子は一人までしかカウントできず、実子がいない場合は二人までカウントすることができます。
生命保険金と死亡退職金の非課税枠を拡大できる
前項では養子が「法定相続人の数」を増やす作用によって基礎控除の枠を拡大させる効果をお話しましたが、同じような作用で生命保険金や死亡退職金の非課税枠を拡大させることもできます。
両者には「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠が用意されているので、こちらの方でも基礎控除と同じように養子が非課税枠を広げてくれるのです。
養子制度には2種類ある
ところで、日本の養子縁組制度には2種類あり、どちらによるかによって法律上の作用が変わってくることは知っておく必要があります。
普通養子
普通養子縁組による養子のことで、縁組のルール上の縛りが下記の特別養子縁組よりも緩く、比較的利用がしやすいといえます。
養子が15歳以上であれば本人の意思で、15歳未満の場合は親権者の承諾が必要です。
養子となる者は養親よりも年下でなければなりませんが、養親となる者は20歳以上であれば良く、独身でも構いません。
養子と実親との関係は切れず、養親と実親両方の相続が可能です。
上の項までで説明してきた「養子」はこちらの普通養子のことを指しています。
特別養子
特別養子縁組による養子を特別養子といいます。
制度上の縛りが強く、子の福祉や利益を確保することの要請度が強い場合のみ利用できます。
養親となれる者にも一定の年齢要件があり、夫婦で共同して養親となる必要があります(独身では不可)。
子は原則として6歳未満でなければならず、実親の承諾も原則必要です。
特別養子は実親との関係が切れるのでこちらは相続できず、養親の相続だけが認められます。
特別養子は相続税法上は実子としての扱いになるため、普通養子のようなカウント数の制限はありません。
養子縁組の手続きについて
普通養子縁組の手続きは、条件さえ満たしていれば市区町村役場への届出をすることで可能です。
ただし、養子が未成年の場合は原則として家庭裁判所の許可を要します。
未成年であっても、その養子が自分または配偶者の直系卑属である場合は裁判所の許可は不要です。
特別養子の方は養子となる者、養親となる者双方の条件を満たした状態でさらに実親の許可を取り(実親による虐待があるなど特別な事情がある場合は不要)、家庭裁判所の審判によって特別養子縁組を認めてもらう必要があります。
養子縁組のデメリットは?
養子縁組には一定のデメリットもあります。
まず一つに、相続争いの火種なってしまう可能性です。
養子は基礎控除枠を増やしてくれますが、一方で他の相続人から見れば頭数が増える分、自分の取り分が減ってしまうことになります。
法定相続分としては養子も実子と同じだけの取り分があるので、実子としては血の繋がっていない養子の場合は一種の不公平感を覚えてしまう可能性があります。
またもし孫を養子にした場合(孫養子といいます)、代襲相続人とならない限りは相続税の2割加算の対象になってしまいます。
孫養子で養子が未成年の場合、相続の時点で養子とその実親がどちらも相続人となるケースでは、未成年者は単独で法律行為ができません。
実親は相続人でもあるので利益相反行為となり子を代理することができないので、その場合は家庭裁判所で特別代理人の選任手続きを取る必要がでてきます。
相続対策として養子を検討されるなら当事務所へご相談ください
養子縁組は上手く利用できれば節税対策にも活用できるものですが、節税の為だけに利用してしまうと税務署から否認されてしまい節税効果を得られなくなることがあります。
養子制度は本来節税のためのものではないからです。
相続発生と近接した時期にされた縁組で、節税以外に特に理由がないような縁組などは要注意です。
養子と養親の関係性や出会ってからの期間、あるいは相続で財産をどれくらい承継したかなどが見られますので、これから縁組を考えている場合は税務署に否認される可能性がないかどうか検討する必要があります。
当事務所でも相談に応じておりますので、お気軽にお声掛けください。