あなたの取り分は?法定相続分と遺留分を解説

相続人が複数いる場合、多額の遺産の取り分を巡って争いになることは相当昔からありました。

今でもそれは変わっていませんが、「法律」というものが定着してしっかり機能している現代ではそのリスクは幾分抑えられています。

各自の取り分となる遺産額はある程度指標にできる目安があり、これがトラブル回避に役立っているのです。

取り分は法定相続分が目安になる

基本的に、誰にどれくらいの遺産を相続させるかは被相続人となる人の自由な意思で考えることができます。

しかし複数相続人がいる場合「公平性」というものもある程度考えないと、不公平感が募った相続人が争いを始めてしまうことも危惧されます。

そこで日本の法律では、被相続人との関係の深さなどを考慮して、誰がどれくらいの遺産を承継するのが望ましいかということを予め規定しており、これを「法定相続分」といいます。

後述しますが法定相続分は強制力があるわけではなく、指標や参考値という位置づけで機能することになります。

法定相続分で規定している各自の取り分とは?

法定相続人に対して、法定相続分は各自の取り分を規定しています。

以下で具体例を挙げて説明します。

①相続人が配偶者のみの場合 配偶者が全遺産を承継
②相続人が配偶者と子(第一順位)の場合 配偶者が二分の一、子が二分の一
③相続人が配偶者と直系尊属(第二順位)の場合 配偶者が三分の二、直系尊属が三分の一
④相続人が配偶者と兄弟姉妹(第三順位)の場合 配偶者が四分の三、兄弟姉妹が四分の一

「子」及び「直系尊属」「兄弟姉妹」はそれぞれ複数いる場合均等の取り分となります。

例えば配偶者と二人の子が相続人となる場合、配偶者が二分の一、各子はそれぞれ四分の一ずつの取り分となります。

こう見ると、法律は被相続人と一番関係が深い者を配偶者と考えて遺産の取り分においても優遇しているのが分かりますね。

また優先順位が低くなるにしたがって取り分も少なくなっていくのが分かります。

遺産分割協議で自由に話し合うことも可能

法定相続分はあくまで目安、指標という位置づけで強制力はないとお話しました。

もし遺言書が残されていたら別ですが、遺言書が無い場合は相続人同士が話し合って遺産の取り分を自由に決めることができます。

例えば各兄弟間で、仕事が順調な兄が障害を持つ弟を気遣って弟に多くの取り分を分けてあげることもできます。

しかし多くのケースでは各自ができるだけ多くの遺産を貰いたいという意識が働きますから、お互いが納得できる指標や目安が必要になってきます。

「法律で規定されているならしかたないな。これが一番公平だろう」と納得感を持たせられるのが法定相続分ですから、これを基軸として、各ケースで実情に応じた取り分を決めることが可能になっているのです。

話し合いで決定した取り分は「遺産分割協議書」という書面にして残しておくことで事後の紛争を予防することができます。

被相続人は遺言書で相続分を指定できる

被相続人となる者は遺言書で遺産の取り分を自由に指定することができ、法定相続分には必ずしも従う必要はありません。

この場合もあくまで指標、参考値となるだけですので、公平さを重視したいならば法定相続分通りの取り分を指定しても良いですし、事情があって法定相続分とは異なる取り分を指定したいならばその通りにもできます。

遺言書では被相続人の自由意思が最優先されるからです。

遺言書が残された場合、相続人は基本的には遺言書の指示通りの取り分を承継することになります。

しかし相続人全員が合意した場合のみ、前項でお話した遺産分割協議を行って、遺言書とは異なる取り分で遺産を承継することができます。

また、次項で解説する「遺留分」を侵害する取り分を遺言書で指定した場合には、後から遺言書の指示が覆されることがあります。

最低取り分「遺留分」に注意!

一定の相続人には、遺産の最低取り分として「遺留分」が法律によって確保されています。

遺言書でこれを侵害する(遺留分を確保しない)取り分の指定をした場合、遺留分の権利を有する者は他の相続人に「遺留分減殺請求」を行って自分の遺留分を取り戻すことができます。

ただしこの権利は行使しなければ意味がなく、そのままにしていると遺留分を取り戻すことはできません。

遺言の内容に遺留分を持つ本人が納得していれば別にそのままでも良いわけです。

遺留分は兄弟姉妹には無く、配偶者、子、直系尊属のみに認められています。

総体的遺留分(相続人全員の遺留分)は直系尊属のみが相続人となる場合は遺産の三分の一、それ以外の場合は二分の一です。

実際に個々人の遺留分を算出するには総体的遺留分に各自の法定相続分をかけて算出します。

例えば配偶者と二人の子が相続人となる場合、配偶者は四分の一(1/2×1/2)、子どもはそれぞれ八分の一(1/2×1/4)という計算になります。

遺留分については計算もややこしいですが、これを侵害しないような遺言書の作成を考えたり、あえて侵害する遺言書を作成する場合には事前に相続人となる者と話し合って調整をしておくなどの工夫が求められます。

後でトラブルの種とならないように、事前に専門家の助言を得ておくと安心です。